場末のポーカー場。 男は配られた手札を見て、二度見した。 何かがおかしい。 男は係の者を呼び何かの手違いじゃないのかと尋ねた。 完全な手違いだった。 係の者は丁重に手違いを詫び、その試合は無効になった。 配られた手札はロイヤルストレートフラッシ…

深夜の遅い時間。 少年は飼っている大きな犬にもたれ掛かり、例のアニメのセリフを思い出して呟いた。 「ギルガメッシュ、僕はもう疲れたよ…」 少年は自分の言い間違いにハッとして、周囲を見渡し親が聞いていないことを確認した。 犬は大きなため息をついた…

「あと、もうちょっとやねんけどな」 「惜しいねんけどな。」 彼の口グセであり、 最期までそう言ってた。 これは彼への批判ではない。 賛美か？ おそらく親しみであろう。 なぜなら客観的に見れば「全然」だったから。

「花がきれい…」 散歩中に呟いた。 すると、彼は「だから何なん？」と言う。 せめて「どうしたの？」とか言えないのか。

「熱中はしてもいいが、 熱狂はやだなあ。」 と、誰かがつぶやいたのが聞こえた。 まあ、とにかく熱中症には気を付けよう。

知り合いに絶対に遅刻しない男がいる。 学生時代、会社員時代の今に至るまで、遅刻をしたことがない。 10分前行動はもちろん（正確には15分前行動）、初めて行く場所には下見を欠かさない。 遅刻をしないこと。それが彼の自慢だそうだ。 だが同時に、彼は何…

「悪いことにはなってない。」 彼はいつだってそう言った。私が、不安な時、慌てている時、失敗した時、どん底にいる時も… 彼と別れた後、時折ふと思う。 彼にとって「悪いこと」とは何だっ

「なぜ、この世界では残酷な事件がたくさん起きるのですか？」と少年は尋ねる。 「つまり、『なぜこの世界が存在するのか？』という質問だね？」と先生は応える。 「いえ、違います！なぜ、世界には残酷で不条理な事件が多く存在するのかを知りたいのです。…

ある星で、宇宙人の子どもが母親に尋ねる。 「どうして、地球という星の人間たちは、争ったり、環境を破壊したりするの？」 母親の宇宙人は、洗い物をしながら答える。 「あのね、なぜ雨が降るか、なぜ草が生えるのか、なぜクジラが海を泳ぐのか。そういうの…

吾輩、今日は、「死」についてレクチャーする。 しかし、これはやはり概念の一つに過ぎない。 なぜなら、吾輩が今、キーボードで打ったからである。

インストラクター： 「ダメなものに対する許容心を育んでいきましょう。 そうすれば、あなた自身を受け入れることができるでしょう。」 生徒A： 「誰がダメなものや！！」

深夜にインターフォンが鳴る。 何事だ。 男はそう思いながら、 インターフォンの画面を見ると 間寛平氏がおられた。 彼は慌ててチャンネルを変えた。

1人の老人がテレビを見ている。 ワイドショーのMCが言う。 「そう思うと、日本は平和ですね。」 すかさず「※個人差があります。」と画面の右下にテロップが出た。 彼はなるほどと思った。

スーパーで小松菜を買った。 安かったのだ。 少し汚れた（？）ちぎれた一枚の小松菜の葉っぱが、カートの底に落ちていた。 私はレジの会計の時に「捨てておいて下さい。」と言った。 ふと、自分を思った。

「理解するには、まず、前提として、それが理解できないものだと理解する必要がある。」 この発言を聞いた赤ちゃんは、何のことやら全く理解できなかった。 言った様が滑稽だったのか、ご機嫌に微笑んでいた。

「戦争で死ぬかもしれない。」 「えっ？人って死ぬんですか？」 明日は我が身か 思って食す 肉と酒

好感の持てる汚れ具合の酒場で、 その老人はここぞとばかりにくだをまく。 「叶う夢なら、追いかける意味がねーじゃねえか。なぁっ？そうだろ？？？」 客の大半はその老人を迷惑がっていた。 ”大半は”である。

「どれも一見同じようで違うんだ。」 父親が子供に語りかける。 「グラム当たり同じ値段でも…ほら、こっちは脂身が多くて、そっちは赤身が多い。」 「本当だ。同じじゃないんだねー。」

「店主さん、やはりこの秘伝のタレの中身は秘密なんですかね？」 「ああ、知らない方がいいよ。」 店主は、ぼそっと答えた。 ＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊ 使い古されたネタかな。 でも、ものすごく大事な人生訓である気がする。

リビングでくつろぐ母親と子ども。 「みんながみんな幸せにはなれないのよね。」 その母親は、せんべいを齧りながら、 テレビで流れる鬱々としたドキュメンタリーに説教じみたコメントを呟く。 「なんで、みんながみんな幸せになれないの？」 ポータブルゲー…

テレビで女優が自分の清純派の肩書に苦しんだと言う。 それを耳にして、私は、 今、ラーメンを食べてるのが私だと確認する。 まさか、S・カルマ氏も私から盗みを働こうなど 思いもしないのではないかと思い、 いや用心に越したことはないと こっそり鍵の確認…

７年前に来たEメールを見落としていて、 最近返信したそうだ。 お互い電話して、話は大変盛り上がったそうだ。

何も分からない。 まったくもって何も分からない。 何も分からないったら、 何も分からないんだ。 でも、今日も生きててえらいな私。

「ダメだ。このままじゃエンジンがいかれる。」 その豚に似たパイロットは眉間にしわを寄せ、 額に汗を垂らして言う。 助手席の女の子のフィオも慌てた様子だ。 「このエンジンはポンコツでオンボロなのよ。 過去に何遍もやらかしてる問題児よ。 もっと、ゆ…

ある男が言う。 「それって不毛だよね。」 それを聞いた私は、 「でも、人生自体が不毛じゃない？」 そう言いかけて思いとどまった。 それはそれで意味のある判断だったと私は思う。

先生： 「いいか、今から先生が手本見せてやる。 よーし見てろよ。 こうやって、こうやって、こうやるんだ。 ほーら！見ろ！ 見事に失敗しただろ！！」 生徒： 「・・・。」

「あー、あー、 只今、マイクのテスト中です。 あー、あー … … ちゃうねん。 そんなつもりやなかってん。 誤解やねん。」

連敗中のその球団は、 追加点を取られて、敗色濃厚となった。 「はあ、わしゃあ、もう疲れた…」 そう言って、男はテレビを消して しまい遅れのこたつの中で 天を仰いだ。

「おお、生きている…」

「今、球数はいくつだ？」 眉間にしわを寄せて、監督が男子マネージャーに尋ねた。 彼はスコアブックをのぞきながら、 ため息をついて答えた。 「生まれてこの方、２個です。」 そよ風が、桜を舞い散らせ、 そのため息をさらっていった。 監督はそのため息が…